AIクリエイティブ・ディレクター研修:Google & OpenAI モデルを駆使した次世代の視覚表現・映像制作術

動画生成AIの「物理法則」と「カメラワーク」:Sora & Veo プロンプト術 | Chapter 4

阿部

阿部

Camp College

初級 10
公開日: 2026.01.06

静止画から「3Dの世界を生み出す」へ

Chapter 3までで、意図した通りの画像を生成する技術を習得しました。しかし、動画生成は単に「絵が動く」だけではありません。それは「時間経過」と「物理法則」をAIに記述するプロセスです。

最新の動画生成モデル(Sora 2やVeoなど)は、テキストから映像を作り出す際、光の反射、重力、流体の動きといった物理現象を計算・予測しようとします。この章では、静止画のプロンプトに「動き(Action)」と「カメラワーク(Camera Movement)」のレイヤーを加え、AIを「撮影監督」として指揮する方法を学びます。


4-1. 動画プロンプト特有の要素:「時間」と「物理」

動画プロンプトにおいて、AIは「何を描くか」以上に、「それがどう変化するか」という指示を求めています。

① カメラワークの言語化 (Camera Language)

具体的なカメラ用語を使うことで、映像の没入感とクオリティが劇的に向上します。

  • ドリー / トラッキング (Dolly / Tracking): 被写体に合わせてカメラ自体が移動する。
  • パン / チルト (Pan / Tilt): カメラの位置は固定し、首を左右(パン)や上下(チルト)に振る。
  • ズーム / プッシュイン (Zoom / Push-in): レンズの焦点距離を変えて被写体に迫る。
  • FPV (First Person View): ドローンや人の視点での移動。スピード感の表現。

② 物理挙動の記述 (Physics Description)

AIに「物理的に正確な(Physically accurate)」と指示するだけでなく、具体的な現象を記述します。

  • 流体: 「波が岩に砕けて飛沫になる」「コーヒーにミルクが渦を巻いて混ざる」。
  • 光と反射: 「濡れた路面にネオンが反射して揺れる」「ガラス越しの光が屈折する」。
  • 重力と摩擦: 「砂埃を巻き上げて急停車する」「重い布がゆっくりとなびく」。

4-2. 動画プロンプトの「6レイヤー・テンプレート」

動画生成では、静止画の要素に「時間的要素」を加えた以下の6層構造で指示を出します。

  1. ショットタイプ (Shot Type): ワイド、クローズアップなど。
  2. 主題とアクション (Subject & Action): 誰が、何をしていて、どんな感情か。
  3. 環境 (Environment): 場所、天候、背景。
  4. カメラの動き (Camera Movement): 視点がどう移動するか(最重要)。
  5. 照明と雰囲気 (Lighting & Atmosphere): 時間帯、ムード。
  6. 技術仕様 (Specs): フレームレート(24fps)、フィルムの質感。

ポイント: 「美しい風景」ではなく、「ドローンによる低空飛行ショット。夕暮れの雪山。スノーボーダーが滑降し、雪煙を上げる。」のように、具体的な物理情報を与えるのがコツです。


4-3. モデル別アプローチ:Sora 2 & Veo

OpenAI「Sora 2」:世界シミュレーター

  • 強み: 物理的な整合性と、複数のショットを含むストーリーテリング。
  • 攻略法: 「物語の進行」を記述します。「男が歩き出し、振り返り、何かを発見して驚く」といった一連のアクションを一貫性を保って処理できます。

Google「Veo」:シネマティックな精密制御

  • 強み: 映画的な映像美と、カメラワークの忠実な再現。
  • 攻略法: 撮影監督のつもりで指示を出します。「アナモルフィックレンズ」「ボケ味(Bokeh)」といった専門用語に敏感に反応します。

4-4. Image-to-Video:静止画を「最初のフレーム」にする

Chapter 3で作成したキャラクターを動かす場合、Image-to-Video (I2V) 機能が最強の手段となります。

ファーストフレーム戦略: アップロードした画像を「動画の0秒目」として定義。

プロンプトのコツ: 画像の内容を再説明するのではなく、「動き」だけに焦点を当てたシンプルな指示にします。

○ 良い例: 「カメラがゆっくりズームアウトする。男が右を向いて微笑む。」


【保存版】動画生成プロンプト例題集

例題1:シネマティックな自然描写(ドローン撮影風)

プロンプト:

[Shot Type] 空撮。
[Subject & Action] 荒々しい波が断崖に打ち付け、白い飛沫が舞い上がる。
[Environment] 夕暮れの海岸線。
[Camera Movement] 海から崖に向かって急速に前進(Push-in)。
[Specs] 4k、映画的な被写界深度。

例題2:物理シミュレーションとマクロ撮影

プロンプト:

[Shot Type] 極端なクローズアップ。
[Subject & Action] 透明なガラス玉が木製のテーブルを転がる。太陽光を屈折させ、テーブルに虹色の模様を投影。
[Physics] 転がる際の摩擦と慣性をリアルに表現。
[Camera Movement] ガラス玉を追尾するトラッキングショット。


次のステップへ

静止画に「時間」と「物理」を与える方法を学びました。

いよいよ最終章の【Chapter 5:動画生成・実践編】では、これらのクリップをつなぎ合わせ、一貫したストーリーやCM映像として完成させるための「編集と構成」のテクニックに進みます。

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